ショートストーリー

毎週月曜日に短編小説投稿を目指します。ジャンルは様々。

共感覚

共感覚、すなわちエンパスは高い共感能力がある。
Aは人に対して強く出ることが出来ない。その人に対して不満を言うことが出来ない。喧嘩することが出来ない。他人を傷つけることは自らを傷つけるよりも辛いことである。自分のことは後回しで自分の痛みにひどく鈍感になりがちである。
自分の行きたいところより、他人の行きたいところである。自分の行きたいところよりも、他人が楽しみにしているところの方が、謙虚ではなく本心から、楽しく思えるのである。人の喜びを自分の喜びとして受け取ることが出来る。逆に、人が喜ばなければ自分は本当に喜ぶことは出来ない。
人に対して色として認識する。それは、相手の感情によって波打ったり、色が変わったり人といるのは飽きない。人によって異なる色味は、好奇心が強ければ次々にその人が気になって、人といるのが楽しくなる。が、同時にしんどくもある。嫌われているのか好かれてあるのか、人間関係の立ち位置がある程度わかる。満員電車やコンサート、ライブ会場の中にいると様々な色味によって人酔いしてしまう。今のところ、色によって性格的な傾向があるかどうかはわからない。また、その人の色ではない服を着ていると非常に違和感があるのでなんともうずうずしてしまう。名前の色と人の色がちがっていると、人の名前を覚えるのがとても難しい。
人の死や暴力に触れると、心臓が高鳴ってしまう。でも、気になってみてしまう。まるで自分が殺されるかのような恐怖に陥ることもある。しかし、見たいという好奇心もある。
小説、漫画、映画の世界にどっぷりと浸かることが出来る。まるで主人公となり、ココロと本が一体化したように感じる。見終えると、なんとも言えない喪失感があり、追って作者や世界観を調べてしまう。