ショートストーリー

毎週月曜日に短編小説投稿を目指します。ジャンルは様々。

自察

川を見下ろしながら、歩く。緑に淀んだ隅田川を、端に触れないようのぞき込む。端に触れてしまえば飛び込みたくなる気がした。飛び込んで、飛沫を浴びて、消えてしまいたいと思いたくなる気がした。川に流れて目を瞑れば、どれだけ気持ちいいだろう。緑に溶けてしまえばどれだけ楽しいだろう。
死にたいと思うほど大層な苦労を背負っているわけでも、現実が辛い訳でもない。自分よりも苦しんでいる人、悲しい人辛い人は大勢いる。自分と人生を代わりたいと思う人は数え切れないだろう。死にたい切っ掛けなど、
ない。
それでもふと何も無いのに死にたいと思う。
スカイツリーを見あげて、グルグルと廻る。過ぎた願いを抱えて、死にたいと泣くその人生を生きてみるのも悪くは無い。